【会津藩物語】第六話 親子二代の大仕事

会津藩物語

   会津百二十万石の太守となった上杉景勝は五大老の一人に列し、次第に石田三成に傾斜して徳川家康と対立するようになりました。神指城を築き軍備をしきりに整える上杉の様子に、家康はいずれ最大の敵となると見て、慶長五年(一六〇〇)遂に会津征討の命令を出し、自らも京都伏見城を出て長駆会津に向ったのです。これを聞いた景勝も神指城築城を中止し、決戦に備えました。ところが、家康が会津に向ったことを知った石田三成は、家康を倒すには絶好の機会と見て、豊臣恩顧の諸大名に呼びかけて兵を挙げたのです。

   腹背に敵を受けた家康は、急いで会津征伐を中止、江戸に引き返して石田三成を討つべく西に向いました。天下別け目の関ヶ原合戦です。しかし決戦は短時日のうちに家康の勝利するところとなり、景勝は孤立し、野望空しく家康の軍門にくだらざるを得なくなったのです。景勝は会津を追われ所領百二十万石のうち九十万石を失ない、米沢三十万石の領主に押し込められました。

   上杉のあと鶴ヶ城には、再び蒲生が入りますが二代目の秀行に、世継が無いまま断絶し、その後に入ったのは、賤ヶ岳七本槍の一人として勇名をはせた加藤嘉明でした。嘉明は小田原攻めや朝鮮征伐で戦功をたて十万石の大名となっていましたが、秀吉没後は家康に組し、四国松山城二十万石を与えられていました。嘉明はさらに二十万石を加増され、会津四十万石の領主となって鶴ヶ城に乗り込みました。加藤がやったのは親子二代にわたる大規模な土木工事でした。

   まず着手したのは鶴ヶ城の大改修でした。鶴ケ城は慶長十六年(一六一一)の大地震で、天守閣は傾き、石垣はすべて崩れ落ちるといったぐあいに惨たんたる有様を呈していたのです。蒲生氏郷が建設した天守閣は七層でしたが、この時五層に改められました。鶴ヶ城のいまの姿は、嘉明の子の明成の時に完成したとされています。東にあった入り口も北につけ変えられました。　　　　(第七話へ つづく)